本当に読み取り作業がラクになる
AI OCRとは?
AI OCR徹底比較ガイド
決算書

「決算書の入力が負担になっている」「そもそもAI OCRって、決算書のような複雑な書類にも使える?」 そう感じている方は多いのではないでしょうか。
決算書は書式や勘定科目が取引先ごとに異なるうえ、誤入力が審査や与信判断に直結するため、手作業での処理を続けることは業務効率だけでなく、ミスのリスクという観点からも課題があります。
そこでこの記事では、決算書におけるAI OCRでの読み取り時の課題、導入メリット、対応できる決算書の種類、サービスの選び方から導入の流れまで解説していきます。
決算書におけるOCRの現状と課題
決算書のデータ化において、OCRに対する現状はどのような状況なのでしょうか。
決算書におけるOCRの現状
地域金融機関456先へのアンケートの「地域金融機関における決算書の入手・登録事務に関するアンケート調査結果」を見ると、顧客からの決算書の入手方法について各手段の割合を平均すると、紙ベースでの入手が86.4%(現物59.2%、コピー27.2%)という結果でした。また、信用保証協会への決算書の提出方法としては、紙による提出が97%となっています。
このように、金融機関においては決算書の大半は今なお紙で流通しており、効率化の観点からもOCRによるデータ化が欠かせない状況といえるでしょう。
上の調査では、決算書・確定申告書の登録方法として、「法人では手入力38%、OCR登録60%、データ取り込み2%」と、OCR登録は60%程度となっています。さらに、個人事業主では、「手入力67%、OCR登録33%」であり、手入力が多い状況です。
決算書のOCRにおける課題
上の調査では、「法人・個人事業主ともにOCR登録する際のエラー率は20%以下が最も多いが、エラー率が20%超になるとする地域金融機関が半数以上を占める」とされています。つまり、OCRを使用したとしても、一定数のエラーが発生することは避けられず、その後の目視確認や修正作業が担当者の負担として残り続けているのが実情といえるでしょう。
とはいえ、OCRを利用しない場合には、「決算書情報を手入力する場合に要する時間は、法人は15~30分/件、個人事業主は15分以内/件が最も多い」とされており、OCR以上の時間と労力がかかることは明らかです。
つまり現状は、「手入力では時間がかかりすぎる、かといってOCRではエラーが多い」という、どちらを選んでも課題が残る状況に多くの現場が置かれているといえます。AI OCRを活用することで、こうした課題をまとめて解消できる可能性があります。
決算書のOCRのエラー要因
決算書のOCRによる読み取りにおいてエラーとなる要因は何なのでしょうか。アンケート調査では、OCR登録の際にエラーとなる要因は以下とされています。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| スキャン画像(PDF)が歪んでいる、影になっている部分がある | 49% |
| 文字や数字が滲んでいる、裏面の情報が映っている | 48% |
| 決算書類が足りない等、情報不足がある | 36% |
| 手書きのメモや付箋等があり一部読み取れていない | 35% |
| 貸借が落ちていない等、数字の不一致等がある | 33% |
| 決算書が印字ではなく手書きで作成されている | 27% |
| 複合機等のゴミや読取り画面の汚れがPDFに反映している | 20% |
これを見ると、エラーの上位要因はスキャン品質に関わるものが大半を占めていることがわかります。最も多い「スキャン画像の歪み・影」と「文字や数字の滲み・裏面の映り込み」はいずれも紙の決算書をスキャンする際に生じやすい問題です。また、「手書きのメモや付箋」や「手書きで作成された決算書」など、印字以外の文字への対応が難しい点も従来のOCRが抱える根本的な課題といえるでしょう。
決算書にAI OCRを導入する4つのメリット
OCRでの読み取りは需要があるけれども、課題もあることがわかりましたが、決算書にAI OCRを導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
既存のOCRで難しい要素の読み取り
AI OCRは、歪みや影、文字の滲み、手書き文字といった既存のOCRで難しい要素の読み取りを行うことができます。AI OCRはこれらの課題に対して、ディープラーニングを活用した画像補正や文字認識の技術で対応します。
スキャン時に生じた歪みや影を自動で補正し、滲んだ文字や裏面の映り込みがあっても正確に読み取れるよう学習を重ねます。また、手書き文字についても認識精度が年々向上しており、従来のOCRでは対応が難しかったケースでも安定した読み取りが可能になっています。
さらに、決算書は企業や作成ソフトによって書式やレイアウトが大きく異なりますが、AI OCRは多様なフォーマットに柔軟に対応できる点も強みです。定型フォーマットを前提とした従来のOCRとは異なり、未知のレイアウトであっても項目を自動で判別し、必要なデータを抽出することができます。
データ入力工数の削減
AI OCRの導入によって得られる最もわかりやすいメリットが、データ入力にかかる工数の削減です。前章のアンケート調査でも示されているように、手入力では法人1件あたり15〜30分の作業時間が発生します。AI OCRを活用することで、こうした入力作業の大部分を自動化することができます。
決算書をスキャンしてシステムに取り込むだけで、必要な数値や項目が自動で抽出・データ化されるため、手入力にかかっていた時間を大幅に短縮することができるのです。削減できた時間は、審査や分析といったより付加価値の高い業務に充てることができ、業務全体の生産性向上にもつながるでしょう。
分析精度が向上
データ入力の自動化によって、人的ミスの減少という観点からも分析精度の向上に大きく貢献します。
手入力では、数字の打ち間違いや項目の転記ミスが一定の確率で発生します。決算書の数値は融資審査や経営分析、事業計画にも影響するため、わずかな入力ミスが誤った判断につながるリスクがあります。AI OCRによって入力作業を自動化することで、こうしたヒューマンエラーを大幅に抑制することが可能です。
また、読み取ったデータを一定のフォーマットで出力できるため、複数期分の決算書を横並びで比較・分析する際の精度も高まります。書式がバラバラな決算書も統一されたデータとして蓄積できるようになるため、経年比較や財務トレンドの把握がしやすくなり、より根拠のある審査・経営判断につなげることができるでしょう。
システムと連携してデータを活用できる
AI OCRで読み取ったデータは、そのまま手元に保存するだけでなく、既存のシステムと連携することでより幅広い活用が可能になります。
AI OCRサービスのなかには、会計システムや会計システムやERP、経営管理システムなどと接続することで、読み取ったデータを自動で連携先に反映させることができます。システムに取り込まれたデータは、財務分析や経営管理に活用することができます。
売上や利益の推移、コスト構造の変化といった財務トレンドをシステム上で把握しやすくなり、経営計画の策定や予実管理の精度向上にもつなげることができるでしょう。
AI OCRが有効な決算書の種類とは
決算書には、さまざまな種類の帳票が含まれます。AI OCRを活用できる決算書の種類には以下のようなものがあります。
| 帳票名 | AI OCRの活用ポイント |
|---|---|
| 貸借対照表 | 資産・負債・純資産の各項目と数値を自動抽出し、財務状態の把握やシステムへの登録を効率化できます。 |
| 損益計算書 | 売上高・費用・利益などの項目を自動読み取りし、収益性分析や経営管理への活用を迅速化します。 |
| キャッシュフロー計算書 | 営業・投資・財務の3区分のデータを自動抽出し、資金繰りの把握や分析業務を効率化。 |
| 株主資本等変動計算書 | 純資産の変動項目を自動読み取りし、資本構成の変化をシステムに反映します。 |
| 個別注記表 | 文章形式の補足情報をテキストデータとして抽出し、会計方針の確認や記録管理に活用できます。 |
| 事業報告書 | 経営方針や事業概況などの文章情報をデータ化し、経営状況の把握や記録業務を効率化します。 |
なお、決算書は帳票の種類や企業によってレイアウトや項目名、数値の配置が異なります。導入の際には、自社で扱う帳票に対してAI OCRが十分な読み取り精度を発揮できるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
決算書AI OCRのチェックポイント
決算書の読み取りにAI OCRサービスを活用するときには、チェックしておくべきポイントがあります。
手書き・低品質スキャンの決算書でも読み取れるか
決算書のAI OCRを選ぶ際には、手書きや低品質スキャンの決算書でも正確に読み取れるかどうかが重要です。
中小企業や個人事業主が提出する決算書には、手書きで記入されたものや、古い書類をスキャンしたために画質が粗いものが少なくありません。こうした書類に対応できないOCRでは、読み取りエラーや数値の誤認識が発生し、担当者による手修正が必要となってしまいます。
鉛筆で記入された薄い文字や、傾いてスキャンされた書類、インクのにじんだ帳票などでも正確にデータ化できるか、事前にサンプル書類でテストを行い確認しておくことが大切です。
決算書特有の項目への対応精度
決算書の読み取りにAI OCRを選ぶ際には、決算書特有の項目への対応精度を確認することが重要なポイントとなります。
決算書には、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書といった財務諸表固有の勘定科目や、複雑な表形式のレイアウトが含まれています。汎用的なOCRツールでは、こうした決算書特有の構造を正しく認識できず、項目と数値の対応がずれたり合計欄を誤って読み取ったりする可能性があります。
そのため、決算書のデータを学習したAI OCRかどうかや、専門用語や表の読み取りに強いかどうかを確認するのがよいでしょう。
クラウド型とオンプレミス型を選択できるか
決算書AI OCRを選ぶ際には、クラウド型とオンプレミス型を選択できるかを確認することも大事です。
企業のセキュリティポリシーやシステム環境によって、適した導入形態は異なります。クラウド型は初期費用を抑えられ導入が容易ですが、機密情報を外部サーバーに送信する必要があります。一方、オンプレミス型は自社サーバー内で処理できるためセキュリティ面で安心ですが、初期投資やサーバー管理の負担が大きくなります。
金融機関や上場企業では、決算書に含まれる機密性の高い財務データを外部に出せない場合が多く、オンプレミス型が必須となるケースがあります。しかし、中小企業や会計事務所では、初期費用を抑えつつスピーディーに導入できるクラウド型を選ぶことで、早期に業務効率化の効果を得られるでしょう。
セキュリティ認証の取得状況
決算書読み取りのためのAI OCRを選ぶ際には、セキュリティ認証の取得状況を確認しましょう。
決算書には企業の機密性の高い財務情報が含まれているため、データの取り扱いに関するセキュリティ対策が不十分なサービスを選ぶと、情報漏洩やサイバー攻撃によるリスクが高まります。第三者機関による認証を取得しているサービスであれば、一定水準以上のセキュリティ体制が整っていることの証明となるので確認しておきましょう。
例えば、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマーク、SOC2といった認証を取得しているサービスは、データの暗号化、アクセス制御、監査体制などが厳格に管理されており安心です。
サポート体制・カスタマイズ対応の充実度
決算書AI OCRを選ぶ際には、サポート体制・カスタマイズ対応の充実度を確認することが重要です。
導入後に操作方法で困ったり精度に問題が生じたりした際、迅速なサポートがなければ業務が停滞してしまいます。また、自社独自の決算書フォーマットや特殊な項目に対してAIの学習をサポートしてくれる体制がなければ、読み取り精度を高めることができずシステムを十分に活用できないかもしれません。
専任の担当者がサポートしてくれる体制や、AI学習支援の充実度を確認することで、導入後も安心して決算書AI OCRを運用できるでしょう。
AI OCR導入の流れと進め方
決算書の読み取りのためにAI OCRを導入する場合には、どのような流れや進め方になるのでしょうか。
STEP1:自社の決算書処理フローと課題を整理
決算書AI OCRを導入する際には、まず自社の決算書処理フローと課題を整理することが重要です。
現状の業務フローや課題を明確にしないまま導入を進めると、本来解決すべき問題に対応できないシステムを選んでしまったり、導入後に期待した効果が得られなかったりする可能性があります。自社の処理フローを可視化し、どこにボトルネックがあるのかを特定することで、AI OCRに求める要件が明確になるでしょう。
そして、ゴールをどのように設定するかや、KPIを明確にすることも重要です。「入力時間を50%削減したい」「特定の勘定科目の読み取り精度を重視したい」など、具体的な導入目的とKPIを設定することで、導入後の効果測定や改善施策の判断がしやすくなります。
STEP2:無料トライアル・精度検証で自社書類への適合を確認
当然のことですが、決算書AI OCRを導入する際には、無料トライアルや精度検証で自社書類への適合を確認しましょう。
カタログスペックや営業資料だけでは、実際に自社で扱う決算書に対してどの程度の精度で読み取れるのか判断できません。決算書は企業ごとにフォーマットが異なりますし、手書き文字や印字の濃淡、レイアウトの違いなどが読み取り精度に大きく影響します。
複数のサービスで比較検証を行うことで、自社書類に最も適したAI OCRを選定でき、導入後のミスや手戻りを最小限に抑えられます。
STEP3:既存システムとの連携設計・要件定義を行う
決算書AI OCRを導入する際には、既存システムとの連携設計・要件定義を行うことが重要です。
すでに利用している他のシステムとAI OCRで読み取ったデータを連携できなければ、手作業での転記が残り、業務効率化の効果が半減してしまいます。会計ソフトや基幹システムと自動連携できる仕組みを構築することで、入力作業を大幅に削減し、データの即時活用が可能になります。
API連携が可能か、CSV出力に対応しているか、既存システムとの互換性はどうかなど、技術的な要件を明確にした上で導入を進めるようにしましょう。
STEP4:パイロット運用で効果測定し本格導入へ移行
決算書AI OCRを導入する際には、パイロット運用で効果測定を行い、本格導入へ移行するのがよいでしょう。
いきなり全社展開すると、想定外の問題が発生した際に業務全体が停滞するリスクがあります。まずは一部の部署や限られた書類で試験運用を行い、実際の業務における効果や課題を検証することで、本格導入時のトラブルを最小限に抑えられます。
パイロット運用の段階で精度が不十分であればAIの追加学習を依頼したり、運用フローを見直したりすることで改善を行います。効果が確認できた時点で段階的に対象範囲を広げ、最終的に全社展開へと移行することで、安定した運用と確実な業務効率化を実現できます。