AIテンプレート自動生成

AI OCRの多くでは帳票を読み取る際に、帳票ごとにレイアウトを定義する「テンプレート設定」が必要であり、その作業に多くの手間と時間がかかる点が課題でした。ですがAI OCRのなかには、AIが自動でテンプレートを生成してくれる機能を持ったものが登場しています。

ここでは、AIによるテンプレート自動生成機能がなぜ重要なのか、どんな種類があるのかを解説します。AI OCRを選ぶ際の参考にしてください。

AI OCRのテンプレート自動生成機能とは

AI OCRのテンプレート自動生成機能とは、帳票や文書をスキャンした際に、AIが自動的にレイアウトを解析し、読み取りに必要なテンプレートを生成してくれる仕組みのことです。

従来型のAI OCRでは、請求書や注文書、申請書など帳票の種類ごとに、項目の位置や領域を人手で定義する必要がありました。その場合には、細かなルールを1つひとつ設定しなければならず、新しいフォーマットが増えるたびに設定作業が発生していました。AIを活用したOCRといっても、このテンプレートの作成は人間が行わなくてはならなかったのです。

そこで、AI OCRのテンプレート自動生成機能が実装されたツールが生まれました。これは、AIが帳票全体を解析して項目の配置を自動で特定し、読み取りに最適なテンプレートを生成するというものです。そのため、異なるレイアウトの帳票が混在していても柔軟に対応でき、事前の細かな設定作業を大幅に減らすことができます。結果として、さまざまな文書をスピーディーにデータ化し、経理や総務をはじめとする事務部門の業務効率化を強力にサポートすることが可能になります。

AI OCRのテンプレート自動生成が重要な理由

AI OCRのテンプレート自動生成機能はなぜ重要なのでしょうか。以下のようにメリットが多いので、AI OCRを選ぶときにはAIによるテンプレート自動生成機能があるものを選びましょう。

テンプレート作成の手間とコスト削減

テンプレート自動生成機能があるAI OCRを導入する際には、テンプレート作成の手間とコストを削減できる点が大きなメリットとなります。

通常のAI OCRでは帳票ごとにテンプレートを作成し、レイアウトや入力項目を細かく設定する必要がありました。これには専門知識を持つ担当者が時間をかける必要があり、運用コストが膨らむ原因でした。

しかし、AI OCRでは自動でテンプレートを生成できるため、事前の設定作業を最小限に抑えられます。それにより、人手による設定や修正の工数が大幅に削減され、コスト削減だけでなく導入スピードの向上にもつながります。

多様な帳票やフォーマットへの対応

テンプレート自動生成機能があるAI OCRを活用することで、多様な帳票やフォーマットに柔軟に対応できるようになります。

企業では請求書・領収書・注文書など、取引先や部門ごとに異なるフォーマットの帳票を日常的に扱っています。通常のAI OCRでは帳票ごとにテンプレートを作成しなければならず、その数が増えるほど運用が煩雑になります。しかし、AI OCRは機械学習によって文字や項目の配置を自動的に認識できるため、異なる帳票フォーマットでも共通して処理が可能になります。

AI OCRであれば、数枚のサンプルを読み込ませるだけでパターンを学習し、新しいフォーマットにも即座に対応できます。これによりフォーマット変更のたびに発生していた管理コストを大幅に削減できます。

スピーディーな導入と運用の実現

テンプレート自動生成ができるAI OCRを導入することで、スピーディーな導入と運用を実現できるようになります。

従来のAI OCRは、帳票ごとに細かな設定やテンプレート作成が必要で、導入初期の準備に多くの時間と工数がかかっていました。テンプレート自動生成機能は機械学習によって帳票のフォーマットを自動認識し、テンプレートを生成できるため、導入準備の負担を大幅に削減できます。

テンプレート自動生成によってスピーディーな導入と運用が可能となり、従来型OCRよりも早く業務効率化を実現できます。

属人化を防ぎ業務の標準化

AI OCRのテンプレート自動生成を活用することで、属人化を防ぎ業務を標準化することが可能です。

通常のAI OCRでは、帳票の設定やテンプレート作成にノウハウが必要であり、担当者の学習と経験に依存していました。そのため、特定の担当者しか対応できない状況が生まれやすく、業務が属人化してしまうリスクがありました。

しかし、AI OCRが自動でテンプレートを生成してくれる仕組みを導入すれば難しい手順がないので、誰でも共通の簡単なフローで帳票処理を行うことができます。これにより作業のばらつきがなくなり、標準化された業務プロセスを維持できるようになります。

AI OCRのテンプレート自動生成機能の種類

AI OCRには、さまざまなテンプレート自動生成機能が搭載されています。AIがどのように帳票を読み取るのか、また利用者がどのようにAIへ指示を出すのかによって、その仕組みや形式が異なります。

AIが自動で項目を読み取るもの

テンプレート自動生成機能を持ったAI OCRのなかには「AIが自動で項目を読み取る仕組み」のものがあります。これは、帳票を読み込むだけでAIが自動的にレイアウトや項目を解析し、日付や金額、取引先名といった必要な情報を抽出してくれるものです。

非定型帳票のOCRで重要なのは項目としてデータを取り出すことです。テンプレート自動生成機能が搭載されたAI OCRでは、AIが自動で設定した抽出条件をもとにテンプレートを生成し、その結果から利用者が抽出したい項目を選択することで、必要な情報を効率的に取り出してくれます。この形式のものとしては「スマートOCR」があります。

生成AIへ言葉で指示するもの

テンプレート自動生成機能のなかには、生成AIへ言葉で指示する仕組みのものがあります。これは、利用者が自然な言葉で要望を伝えるだけでAIが自動的にテンプレートを生成してくれるものです。既存のテンプレートと対話しながら自社の業務に最適な形へカスタマイズできる点が大きな特徴です。

AI OCRでは問い合わせ管理や案件管理、営業日報といった幅広い業務に対応するテンプレートが用意されていますが、実際には業種や企業ごとに管理項目や業務フローが異なるため、既存のテンプレートをカスタマイズする必要があります。

そこで、既存テンプレートをベースに「顧客情報を追加したい」「案件ステータスを細かく分けたい」といった要件を自然な言葉でAIに指示するだけで、自社のニーズに沿ったテンプレートを自動的に生成してもらえるのです。

設定されているテンプレートからAIが検出するもの

テンプレート自動生成機能を持ったAI OCRのなかには、あらかじめ設定されているテンプレートのなかから該当するものをAIが自動で検出して処理する仕組みもあります。

帳票をアップロードすると、システム内に登録されているテンプレートの中から最適なものが自動的に選び出され、スムーズに読み取りが行われます。これにより、利用者が毎回テンプレートを指定したり選択したりする手間がなくなり、運用の効率化につながります。