本当に読み取り作業がラクになる
AI OCRとは?
AI OCR徹底比較ガイド
契約書

「契約書の確認や入力作業に時間がかかりすぎている」「契約書管理をもっと効率化したい」「AI OCRで契約書業務はどこまで自動化できるか知りたい」と疑問を持っている人も多いのではないかと思います。AI OCRは、さまざまな業界・業種で取り入れられ始めていますが、契約書の読み取りでも活用できるのでしょうか。
契約書業務では、書式のばらつきや専門用語の多さから、AI OCRの特性を正しく理解せずに導入すると期待した効果が得られないことがあります。
そこでこの記事では、AI OCRが契約書でも有効なのか、読み取り可能な契約書の種類、データ化によるメリット、契約書特有の読み取り項目や必要な機能を解説します。導入時の注意点や実際の活用事例も紹介し、契約書業務にAI OCRを活用する際のポイントも説明します。
AI OCRは契約書でも有効?
まず、AI OCRは契約書においても有効なのでしょうか。アンケートデータを確認するとともに、AI OCRが活用できる契約書の種類を解説します。
AI OCRは利用されている?
まず、「書類のデジタル化」と「AI-OCR のニーズ」に関するアンケート調査によると、「AI-OCRなど文字の自動読み取り&データ化システムを利用している人は38.3%」であり、利用用途としては契約書関連が51.0%と最も多いという結果になっています。
この結果から、AI OCRはすでに多くの企業で実務に取り入れられており、なかでも契約書業務は代表的な活用領域であることがわかります。契約書は文字量が多く、確認・入力・管理に手間がかかりやすいため、AI OCRによる自動化ニーズが高く、効果が実感できると考えられるでしょう。
AI OCRが利用できる定型の契約書
AI OCRの利用が見込まれる契約書の種類にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、定型と非定型に分けて契約書の種類を紹介します。こういった契約書において、AI OCRが利用できると認識いただければと思います。
まず、定型の契約書には以下のようなものがあります。
- 売買契約
- 贈与契約
- 交換契約
- 消費貸借契約
- 使用貸借契約
- 賃貸借契約
- 雇用契約
- 請負契約
- 委任契約(準委任契約)
- 寄託契約
- 組合契約
- 終身定期金契約
- 和解契約
- 定期建物賃貸借契約
- 労働条件通知書・雇用条件通知書
- 金銭消費貸借契約(住宅ローン等)
これらは、法律や慣行によって記載項目や構成がある程度決まっている契約書であり、契約者情報や契約期間、金額、条項の配置などが共通しているケースが多いのが特徴です。そのため、AI OCRによる項目指定での読み取りやテンプレート認識と相性がよく、高い精度でデータ化しやすいといえます。
AI OCRが利用できる非定型の契約書
次に、AI OCRが活用できる非定型の契約書には以下のようなものがあります。
- 取引基本契約
- 秘密保持契約(NDA)
- 労働者派遣契約
- 保証契約
- ライセンス契約書
- 代理店契約・販売店契約
- ソフトウェア使用許諾契約
- 業務委託契約
- 共同研究・共同開発契約
- フランチャイズ契約
- OEM契約
- コンサルティング契約
- M&A関連契約(株式譲渡契約・事業譲渡契約など)
- アライアンス契約
- 広告出稿・マーケティング契約
これらの非定型契約書は、取引内容や業界、企業ごとのルールに応じて条文構成や表現が大きく異なる傾向があります。そのため、従来のOCRではフォーマット差異に対応しきれず、項目の読み取り漏れや誤認識が発生しやすいという課題がありました。
しかし近年のAI OCRは、文字認識だけでなく文脈理解やレイアウト解析、仕分けなどを行えるものが増えています。これらは契約金額や契約期間、当事者情報、重要条項といった要素を表現や配置が異なっていても自動で抽出できるため、非定型契約書であっても実務レベルで活用しやすくなっており、上のような多様な契約書でも読み取ることができます。
契約書で読み取りが必要な項目
AI OCRで契約書の読み取りを行う場合には、どのような項目の読み取りを行う必要があるのでしょうか。一般的な契約書の項目は以下などがあります。これらを抜けもれなく、正確に読み取れるAI OCRを選ぶ必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約者の情報 | 契約を締結する双方の会社名・氏名・所在地など |
| 契約の目的・内容 | 契約によって何を行うのか、業務や取引の内容 |
| 契約期間・有効期限 | 契約の開始日・終了日、更新条件 |
| 契約金額・支払条件 | 報酬額、支払方法、支払期限など |
| 権利義務・責任の範囲 | 双方が負う義務や責任、権利の範囲 |
| 秘密保持条項 | 機密情報の取り扱い方法や守秘義務 |
| 解除条件・解約方法 | 契約解除が可能となる条件や手続き |
| 損害賠償・免責事項 | トラブル発生時の損害賠償範囲や免責条件 |
| 契約違反時の対応 | 違反があった場合の対応やペナルティ |
| 管轄・準拠法 | 紛争時の管轄裁判所や適用される法律 |
| 署名・押印欄 | 契約成立を示す署名・押印の記載欄 |
契約書のデータ化にAI OCRを用いるメリット
契約書に対してAI OCRを用いることで、さまざまなメリットが得られます。
業務効率を向上できる
契約書のデータ化にAI OCRを用いることで、業務効率を向上させることができます。
契約書業務では、契約者情報や金額だけでなく、複雑な契約条件や条文内容の確認・入力が必要となり、多くの時間と工数がかかります。AI OCRを活用すれば、紙やPDFの契約書から文字情報を自動で読み取りデータ化できるため、手作業による入力や確認作業を削減できます。
また、AI OCRでデータ化した契約書情報は検索や抽出が容易になるため、契約内容の確認や過去契約の参照にかかる時間も短縮できます。
ヒューマンエラーを防げる
契約書のデータ化にAI OCRを用いることで、ヒューマンエラーを防ぐことができます。
契約書業務では、契約者名や金額、契約期間、条文内容などを正確に入力・管理する必要がありますが、手作業による入力や転記では、入力ミスや確認漏れといったヒューマンエラーが発生しやすくなります。
AI OCRを活用すれば、契約書の文字情報を自動で読み取りデータ化できるため、人の手を介する工程を減らしミスの発生を抑えられるのです。
契約書特有の複雑なレイアウトに対応できる
契約書のデータ化にAI OCRを用いることで、契約書特有の複雑なレイアウトにも対応することができます。
契約書には条番号が入り組んだ文章構成や段組み、表・箇条書き、脚注などが多く用いられており、一般的な帳票と比べてレイアウトが複雑です。
AI OCRは、AIが文書全体の構造や文脈を解析しながら文字を認識できるため、こうした複雑なレイアウトであっても適切に情報を抽出することが可能です。条番号と条文内容の関係性や、表内に記載された契約条件、注記や但し書きなども一つの意味ある情報として読み取れる点が特徴です。
契約書のAI OCRに必要な機能
では、契約書読み取りのAI OCRを選ぶ際には、どのような機能を持ったものを選ばなくてはならないのでしょうか。
項目指定での読み取り機能
契約書読み取りのためのAI OCRには、項目指定での読み取り機能が不可欠です。
契約書はレイアウトや記載方法が統一されていないものが多く、単純なエリア指定による読み取りだけでは必要な情報を正確に抽出できないケースがあります。実務で活用するには、「項目名」と「その値」をセットで理解し、データとして整理できる機能が欠かせません。
項目指定での読み取り機能を備えたAI OCRであれば、「契約開始日」「契約終了日」「甲乙」「銀行口座」といった項目と対になる値を自動で判別でき、複雑な契約書でも安定したデータ化が可能です。
歪み補正機能
契約書のAI OCRには、読み取り精度を高めるための歪み補正機能が必要です。
契約書は紙で保管・運用されているケースも多く、スキャン時の傾きや湾曲、影の入り込みなどによって文字が歪んでしまうことがあります。こうした歪みがある状態では、OCRの認識精度が低下し正確なデータ化が難しくなるため、事前に画像を補正できる機能が重要なのです。
契約書特有の用語・表現の認識
契約書のAI OCRには、契約書特有の用語や表現を正しく認識できる機能が必要です。
契約書には法律用語や定型句、独特な言い回しが多く含まれており、初期状態のOCRでは正確に認識できない場合があります。そのため、AIに学習をさせられるAI OCRを選ぶ必要があります。
契約書データを継続的に学習させることで、法律用語や条文特有の言い回し、業界ごとの表現を文脈ごと理解した読み取りが可能になります。
テンプレートの自動判別・生成機能
契約書のAI OCRには、テンプレートを自動で判別・生成できる機能が重要です。
契約書は種類ごとにレイアウトや記載項目が異なるため、処理のたびに人手でテンプレートを選択・設定するのは非効率です。AI OCRが契約書の構成や特徴を解析し、既存テンプレートに自動で振り分けられれば、データ化作業を大幅に効率化できます。
また、既存テンプレートに該当しない契約書については、自動でテンプレートを生成できるツールであれば、都度テンプレートを作成・調整する必要がなくスムーズにデータ化を進められるでしょう。
契約書読み取りにAI OCRを導入する際の注意点
契約書の読み取りにAI OCRを導入する際には、気をつけたほうがよいポイントがあります。
セキュリティ対策に注意
契約書読み取りにAI OCRを導入する際は、セキュリティ対策に十分注意する必要があります。
契約書には取引条件や価格情報、個人情報、機密事項など重要な情報が含まれているため、情報漏えいや不正アクセスが発生した場合、企業の信用失墜や法的リスクにつながる可能性があります。
特にクラウド型のAI OCRを利用する場合は、データの保存場所や通信経路の安全性、アクセス権限の管理体制を事前に確認しておく必要があります。
目視での確認を行う
契約書読み取りにAI OCRを導入し、OCRでデータ化したあとには、最終的に目視での確認を行うことが重要です。
AI OCRは高精度で文字を読み取れるものの、読み取り間違いが起こる可能性はありますし、レイアウトの崩れや特殊な条文表現、手書きの追記などがある場合には誤認識が発生する可能性があります。
契約書は一語の違いや数値の誤りが大きな損失やトラブルにつながるため、完全に自動化するのではなく、人の目による確認工程を残すことがリスク回避につながります。
既存システムとの連携性
契約書読み取りにAI OCRを導入する際は、既存システムとの連携性を十分に確認することが大切です。
AI OCRは契約書のデータ化を効率化しますが、基幹システムや文書管理システム、ワークフローシステムと連携できなければ、データの二重入力や手作業による移行が発生し、かえって業務負担が増えてしまいます。
契約管理業務は、承認フローや保管ルールなど既存の業務プロセスと密接に関わっているため、スムーズなデータ連携ができるかどうかが導入効果を左右するので注意する必要があります。必ずどのようなツールと連携ができるか、連携におけるアフターサポートがあるかを確認しましょう。
AI OCRでの契約書読み取りの事例
契約書の読み取りにAI OCRを利用して成果を出した事例を紹介しておきます。これらの活用事例をもとに、自社にも採用できるかどうかを検討してみてください。
月間100時間の作業時間を削減
キヤノンマーケティングジャパン株式会社では、手書き契約書の確認・転記作業の効率化を目的にクラウド型AI OCRを導入。従来は外部委託で対応していましたが、OCRとRPAを組み合わせることで読み取りからシステム登録までを自動化しました。
画像補正や高精度な文字認識により入力負荷を大幅に軽減し、月間約100時間の作業時間削減を実現しました。業務の内製化により、年間約1,000万円のコスト削減にもつながっているとのことです。
参考:https://www.canon-its.co.jp/corporate/info/2021/info-0719
契約書の電子化で年1,700時間を削減
廃棄物収集とリサイクルを行っている横浜環境保全株式会社では、累計3~4万件にのぼる契約書を紙で保管・管理しており、毎月約100件発生する新規契約の入力作業が大きな負担となっていました。
そこで契約書をスキャンして電子化し、基幹システムと紐付ける運用へ移行。冊子状の契約書も効率よくPDF化できる環境を整えたことで、従来は月21人日かかっていた入力業務が約7分の1に短縮され、年間約1,700時間の削減を実現したとのことです。
参考:https://www.pfu.ricoh.com/fi/casestudy/05_y-kankyo.html